現代のライフスタイルは、長時間のデスクワークやテレビ、インターネットなどの娯楽により、日常的に座りっぱなしで過ごす時間が増えています。厚生労働省が発表した「健康日本21(第二次)」のデータによると、座りすぎることがもたらす健康への悪影響は見過ごせないものであり、生活習慣病や死亡リスクの増加と強く関連しています。では、座りすぎることで具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか?このコラムでは、その危険性と改善策について考えてみましょう。
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座りすぎによる健康リスクを理解するには、世界各国の座位時間の比較も非常に重要です。厚生労働省の「健康日本21(第二次)」によると、日本人の座位時間は世界的に見ても一番長い傾向にあります。この背景には、デスクワークの普及や通勤・通学時の長時間移動、さらにはテレビ視聴やインターネット利用時間の増加が影響しています。しかし、座位時間は国ごとに異なり、それぞれの文化やライフスタイルによって大きく差があることがわかります。
座りすぎの健康リスク
座りすぎは、身体にさまざまな悪影響を及ぼします。具体的には、心血管疾患、糖尿病、肥満、さらにはがんのリスク増加に繋がるとされています。長時間座った状態でいると、血液の流れが滞りやすくなり、筋肉の動きも少なくなるため、血糖値のコントロールや脂肪の代謝が悪くなります。これにより、体重増加やインスリン抵抗性の悪化、さらには動脈硬化が進行しやすくなるのです。
また、座り続けることによる心臓病のリスクも注目されています。座っている時間が長いと、血流が鈍くなり、血栓ができやすくなるため、心臓発作や脳卒中のリスクが高まります。厚生労働省の資料によると、1日6時間以上座る人は、1日3時間未満しか座らない人に比べて死亡リスクが高いというデータが示されています。これは、長時間座ることで心血管系に大きな負担がかかるためです。
メンタルヘルスへの影響
座りすぎは、身体だけでなく精神面にも悪影響を与えることがわかっています。長時間座っている生活は、うつ病や不安症状のリスクを高めるとされており、特に孤立感やストレスが高まりやすい現代の仕事環境においては、この問題は深刻です。身体を動かさないことで、脳内のホルモンバランスが乱れ、気分の落ち込みや集中力の低下を引き起こす可能性が高くなります。
座りすぎとがんリスクの関係
さらに、座りすぎはがんのリスクも高めるとされています。特に大腸がんや乳がんのリスクが座りすぎと関連していることが研究によって示されています。運動不足による腸の蠕動運動の低下や、代謝機能の低下が原因とされ、これががんの発生に関与している可能性があります。また、座っている時間が長いと免疫力も低下しやすく、これががんの発生リスクをさらに高める要因となります。
改善策:座りすぎを防ぐために
座りすぎのリスクを軽減するためには、日常生活の中で意識的に体を動かすことが重要です。まず、1時間ごとに5分程度の立ち上がりやストレッチ、歩行などを行うことが推奨されています。これにより、血流が促進され、体への負担が軽減されます。また、長時間の座位が避けられない場合でも、椅子に座りながらできる簡単なエクササイズや、姿勢の改善に努めることが大切です。
加えて、通勤や日常の移動においても、意識的に歩く時間を増やすことが効果的です。エスカレーターやエレベーターの代わりに階段を使う、1駅前で降りて歩くなど、日常の中で少しずつ運動量を増やす工夫が求められます。さらに、在宅勤務やリモートワークが普及している今、家庭内で立ったまま仕事をする「スタンディングデスク」や、テレビを見ながらでもできる軽い運動を取り入れることも有効です。
まとめ
座りすぎは、身体や精神に多くのリスクをもたらす現代病の一つです。長時間の座位による生活習慣病やがんのリスクを避けるためにも、定期的な運動や姿勢の改善、立ち上がる習慣を意識することが必要です。今すぐにできる小さな変化が、長期的な健康につながる大きな一歩となります。
参考リンク
■厚生労働省:健康づくりのための身体活動基準2013
■厚生労働省:座位行動
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