お盆と言えば故郷に帰ってお墓参りをする――。そんな日本古来の風習が過去のものになるかもしれません。すでにお墓や納骨堂に納めた遺骨を他のお墓や納骨堂に移す「改葬」や墓石を撤去する「墓じまい」が増えています。厚生労働省の調査によると、「改葬」が2022年度、全国で15万1,076件にのぼり、過去最多に。墓じまいや改葬の背景には「お墓が遠方にある」ことや「継承者がいない」ことが挙げられ、樹木葬や海洋葬・山葬(散骨)などの選択肢も広がっています。その中でも、環境への配慮と心の安らぎを両立する「樹木葬」が、今、注目を集めています。
樹木葬とは?
樹木葬とは、故人の遺骨を土に還し、その上に樹木を植える葬送方法です。遺骨は専用の容器に納められ、樹木の根元に埋葬されます。樹木葬の大きな特徴は、自然環境との調和を目指す点にあります。自然豊かな場所に設置された専用の区画に埋葬されるため、従来の墓地とは異なり、周囲の風景と一体化するのが魅力です。
樹木葬の魅力
- 環境保護: 樹木葬は、土地を有効活用し、緑地を増やすことができるため、環境保護に寄与します。墓地の造成に必要なコンクリートや石材を削減し、自然な形で埋葬を行うことで、土地の劣化や環境負荷を最小限に抑えます。
- コスト削減: 従来の墓地や霊園の維持管理費用と比べて、樹木葬は比較的安価です。樹木の植樹や維持管理は、通常、運営側が行うため、家族の負担が軽減されます。
- 心の安らぎ: 樹木葬は、故人を自然に還すというコンセプトから、多くの人々に心の安らぎをもたらします。故人が自然の一部となり、長い間、樹木としてその場に存在することができるため、家族にとっても精神的な安心感を与えます。
- エコで美しい: 樹木葬は自然との調和を図りつつ、美しい景観を提供します。緑豊かな公園のような環境に埋葬されるため、訪れるたびに心が癒される場所となります。
樹木葬の課題と注意点
- 法律と規制: 日本では、樹木葬が法律的に認められるためには、各地方自治体の規制を遵守する必要があります。これには、埋葬方法や土地利用に関する規制が含まれます。事前に調査し、信頼できる業者を選ぶことが重要です。
- 維持管理: 樹木葬では、樹木が健康に育つための管理が求められます。運営側が適切に維持管理を行わなければ、樹木の生育が不十分になる可能性があります。選ぶ際には、維持管理の方針や実績を確認することが大切です。
- 永続性の問題: 樹木葬では、樹木が生き続ける限り故人の存在を感じることができますが、樹木が枯れてしまった場合の対応策を考えておくことが重要です。一部の樹木葬地では、樹木が枯れた場合に再植樹を行うなどの対策を取っています。
まとめ
樹木葬は、環境保護と心の安らぎを両立させる新しい形の葬送方法として、多くの人々に支持されています。従来の墓地や火葬に代わる選択肢として、自然との調和を求める人々にとって、非常に魅力的な選択肢です。ただし、法律や維持管理の問題もあるため、十分に情報を集め、信頼できる業者と相談の上、選択することが重要です。樹木葬という新たな選択肢が、未来の葬送文化を形作っていくことでしょう。
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